雲南省、略称“雲”、“滇”。中国の西南辺境に位置し、全国で最も少数民族が生活している省です。南部にベトナム、ラオス、ミャンマーなどとの国境を接し、平均標高が約1500m-2200m前後、北西部にチベット自治区と接するため、平均標高が3000m-4000mの間に位置します。全体的に地形が複雑で、昼夜の温度差が大きく、気候も多様であるため、動植物相が全国最多で非常に豊富です。
雲南省のコーヒー栽培は主に怒江(サルウィン川)、瀾滄江(らんそうこう)、紅河(こうが)、金沙江(きんさこう)等の流域周辺、約800m-1800mの熱帯地域に分布されています。現在、雲南省でのコーヒー栽培面積は1500平米キロメートル前後、総生産量は15万トンから17万トン位です。
1892年にフランス宣教師からコーヒー種を導入した以来、様々な地域に栽培され、現在、雲南省で最も栽培されている品種はカティモール(Catimor)系であり、中でも多様な改良品種や実験品種が存在しています。そのほか、ティピカ(Tipica)、イエローブルボン(Yellow Bourbon)、カトゥアイ(Catuai)も栽培されています。今後、多様なコーヒー品種を楽しむことが期待できます。
主にタスノキ、アカギ、安息香の木、鳳凰木、ヤブニッケ、トネリコギ、タマリンドなど自然生育の樹種でシェードツリーとして使用されています。その他、ナッツ、アボカド、サクランボ、ライチ、バナナやマンゴーなどの付加価値のある人工栽培種も植えられています。栽培時に原則としてシェード率が30%-50%に定められています。
雲南のスペシャルティコーヒープロセスにおけるファーメンテーション(発酵)は⼤分けに3種類あります。発酵過程にパーチメントコーヒーを浸す⼯程の有無によって下のように区別されています。
雲南省で最も伝統的なウォシュッドプロセスで使われていた技法です。一般的には、コーヒーチェリーの外皮と果肉を除去した直後に、水の入っていないタンクにパーチメントコーヒーを積み重なった状態で自然発酵させます。必要な場合、発酵中のパーチメントコーヒーの上にプラスチック薄膜などを覆うことで発酵環境を安定にさせます。全体的に酢酸発酵となるため、クエン酸やリンゴ酸のような有機酸の形成には有利です。予発酵で使用される場合、コーヒーチェリーを山積みになった状態で放置し、中心部の温度を一定に保ちながら発酵させることがあります。その技法は古来雲南のプーアル茶によく使われている発酵方式の一つで、「渥堆」と呼ばれています。
世界中でよく伝われているウォシュッドプロセスはこちらに分類されます。パーチメントコーヒーを水に浸すことで、水に含まれる微生物がミューシレージ(粘質)を分解し、取り除きます。その場合、一定した水質が必要となります。有酸素ドライファーメンテーションと比べると、より安定した発酵温度と一致性のある発酵手順が実現できます。しかし、大量の水を使用することによって発酵温度が低くなり、不完全発酵のリスクも高まります。そのため、経験と設備面への向上が要求されます。
近年雲南省で普及し始める精製処理の過程の一環です。密閉した容器に収穫した直後のコーヒーチェリー、あるいは外皮と果肉を除去した後のパーチメントコーヒーを入れ、二酸化炭素を注入したり、酸素を抜き出したりすることで無酸素環境を作ります。定められた環境で発酵が進行するため、非常にコントロール性と安定性の高い発酵方式です。乳酸のほか、酵母や酵素を添加することで狙い通りのフレーバーに調整することも可能です。現在雲南でウォシュッド、ナチュラル、ハニープロセスなど様々な処理法に使用され、予発酵段階で実施されることがほとんどです。なお、複数のファーメンテーション技法と組み合わせて精製処理することも多く、その場合、[ダブルファーメンテーション]と明示されています。
*Chen DanQi, Seesaw coffee process method guide book:2019,(3):59-61